2022-04-16
相続などで取得したものの、使用することなく放置されてしまうことも多いのが「空家」です。
地域の景観や、災害対策の観点から空家を不動産として有効活用することが重要な問題になっています。
空家を売却した時にかかる税金について今回は解説していきます。
不動産を売却する際、売却した価格が取得費と譲渡所得を上回れば利益が出ます。
この利益は「譲渡所得」といわれるものです。
この「譲渡所得」に対して税金がかかってくるわけですが、その種類としては譲渡所得税、復興特別所得税、そして住民税などがあります。
では、その税額はどのように決まるのでしょうか?
税額は下記のようにして算出します。
税金 = (譲渡収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)× 税率
譲渡収入金額とは、不動産を売却した代金などのことです。また売却をする際には、固定資産税と都市計画税の精算を行いますが、その清算金も譲渡収入金額に含まれます。
取得人は、不動産の購入金額やその際に支払った仲介手数料など、不動産を購入する際にかかった代金と費用などの合計です。
つまり、不動産を入手した時に支払った金額を合計した金額になります(建物の減価償却費を差し引く必要があります)。
不動産を売却するためにかかった費用です。不動産会社に支払う仲介手数料や売買契約書に貼る印紙代などがあります。
税率は、不動産を所有していた期間によって違います。
5年を超えて保有していた不動産を売却した場合には長期譲渡所得となり、譲渡所得税率は15%ですが、5年未満だと短期譲渡所得となり、税率は30%となります。また、住民税も5%よりも高い9%になります。
つまり、取得してからすぐに売却するような場合は税率が高く、長く保有していた不動産を売却する場合には税率は低く抑えられます。
★長期譲渡所得 = 課税長期譲渡所得金額 × (所得税15%+住民税5%) + 復興特別所得税 (所得税額の2.1%)
★短期譲渡所得 = 課税短期譲渡所得金額 × (所得税30%+住民税9%) + 復興特別所得税(所得税額の2.1%)
不動産を所有していた期間は、相続した実家を売却する場合には、前所有者(親など)が家を所有していた期間も含まれます。
ですから、相続直後すぐに売却しても、前所有者(親など)が5年以上その不動産を所有していれば長期譲渡所得の税率が適用されるということです。
この情報を勘違いして、相続しても5年待って売らないと税金を多く納めなければならなくなると思っている方も結構多いです。
不動産を売却する際の経費は、実際にお金の支払いが生じることもあって、分かりやすいのです。
しかしその売却する不動産を取得した時の金額、すなわち「取得費」は分からないということもよくあります。
特に昔からのお家(実家)などを相続した場合は、その家を購入した、または建築した当時の金額が不明というケースです。
昔の不動産売買契約書や建築請負契約書が残っていればいいのですが、無いことも多いです。
そのような場合、取得費は売却価格の5%で計算するという事になっています。
つまり、2000万円で売却する不動産の取得原価は100万円しか認めず、売却経費が無い場合は1900万円に対して課税されてしまいます(税率15%で280万円以上)。
空き家を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円が控除できる「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」という制度があります。
3000万円の控除があれば、支払う税金もグッと少なく(又は0円)になる可能性が高くなります。
しかし、全ての空き家が控除対象となるわけではありません。
利用できる空家の条件は下記の通りです。
(1) 相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものであること(※1)
(2) 相続の開始の直前において当該被相続人以外に居住をしていた者がいなかったものであること
(3) 昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く。)であること
(4) 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと
(5) 相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ、特例の適用期間である2016年4月1日から2023年12月31日までに譲渡すること(※2)
(6) 譲渡価額が1億円以下
(7) 家屋を譲渡する場合、当該譲渡時において、当該家屋が現行の耐震基準に適合するものであること、または解体されていること
これらの条件がクリアになれば、空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例が適用されて、税額が少なく抑えられます。
不動産を売却したときには、取得費用と譲渡費用の差額に対して税金がかかるが、空家の場合は、空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例が適用されることもあります。
また、相続した不動産は相続してすぐに売却しても、相続前の所有年数もカウントされるので、税率が抑えられる可能性があります。